石畳旅情

生誕110年、没後50年を記念して今、巷では日本映画史に残る金字塔として
名高い小津安二郎の足跡を訪ねる流れがあるという。

クワイエットなトーンとでも云うべき、語り過ぎない画の特質感と
構図の精妙さと作品世界感に惹き込んでいく演出力は、他に類を見ないと
断言できる。

日本人をこれだけ丁寧に描き切った映画監督はいないのではないだろうか。
言葉の美しさ、所作とそのすべてに於いて、現代の日本にはない、
嘗ての精神性に、しな垂れかかるという表現は適当か分らないが、
凡その日本人という定義の中で、誰もが斯くありたいと思うのは、
自分だけかと、ふと考えてしまう。

故に小津映画とはそうしたものだと夙に思うのである。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　小津安二郎監督作品「東京物語」撮影で有名な尾道より尾道駅近所路地（※映画とは無関係です）